「NEETING LIFE ニーティング・ライフ」は、生田斗真主演で映画化された「予告犯」などでおなじみの筒井哲也先生の作品です。

打ち切りって検索もあるようですが、最後の見開きを描くために結末から逆算して組み立てた、全2巻の完結漫画です。

ニーティング・ライフは2021年12月、コロナ禍の真っただ中に連載がはじまった作品で、そのコロナ禍が舞台になっています。

中年サラリーマンがブラック企業をやめ、パーフェクトなひきこもり生活をはじめるノンフィクション・ルポの形式で物語がはじまります。

最初に読んでいた時は、コロナのイメージが強くて、分かりづらかったのですが、もう一度読むと、この物語が違う形に見えてきました。

ニーティング・ライフのあらすじと、最終回で主人公の小森建太郎がなぜ外に出たのかについて、考察したいと思います。

『NEETING LIFE ニーティング・ライフ』の作品情報

漫画名NEETING LIFE ニーティング・ライフ
著者筒井哲也
出版社集英社
連載ヤンジャン!(2021年12月〜2023年1月)
巻数全2巻(上・下)完結
発売日上巻 2022年8月19日、下巻 2023年3月17日

あらすじ(ネタバレなし)

主人公は、45歳の営業マン・小森建太郎。

パンデミックの中、超絶なブラック企業である大手建設会社の孫会社「鹿林ハウジング」のリフォームの営業をしていた彼は、20年勤めた会社を辞めます。
貯金と退職金を合わせて2000万円を貯めた彼が始めたのは、究極のひきこもり生活「ニーティング・ライフ」。

年金をもらうまでの20年、ただ、ひきこもり、暇をつぶして生きる。

細かく完璧に計画されたこの生活ですが、隣人の引っ越しなどから、少しずつ揺さぶられていきます。

上巻の感想

ニーティング・ライフは、完璧なひきこもり生活をするにはどうする?といった感じでスタートします。

「HOW TO ひきこもり生活」みたいな形で、主人公小森建太郎が考える完璧なひきこもり生活とは?が語られるのが面白いです。

まったく家から出ずに生きていくための、物件の選定、通販だけで生活するためのDIY、寝て暮らすためのトイレをどうする?など・・・。

外とコミュニケーションをとらずに生きるにはどうしたら良いか、ためにはなりませんが、なるほどとは思います。

ちなみに、引きこもりを考えたきっかけが「方丈記」の鴨長明というのも面白いです。

ただ、そううまくはいきません。

隣に、19歳のかわいい女子大生 伊織澄香が引っ越してきて、彼がはまっていたネットゲーム「ウエイストワールド」のゲーム配信をしはじめたことから、話が変わります。

彼女に、興味をもってしまう・・・。

彼の完璧な生活が変わってしまったのは、ここからです。

ニーティング・ライフを読む方法

ここまで読んで気になった人は、ぜひニーティング・ライフを読んでください。

現在配信しているアプリ「ヤンジャン+」なら、話レンタルの形で、1巻全部読めます。
https://ynjn.jp/title/4609

買って、読みたい方は下記より

【ネタバレ】下巻の感想

※ここから先は、下巻と最終回のネタバレを含みます。

上巻は、比較的ゆっくりめに話が進みます。

でも、下巻から一気にバイオレンスにSFに変わっていきます。

澄香に興味を持ったことで、彼の生活が一変、パンデミックから身を守るために計画した世界にパンデミックが訪れます。

裏切り、物理的な攻撃、戦争、政府による驚きの政策など・・・

築40年の一間のアパートに住む彼の生活から想像できない世界が彼を揺さぶってきます。

それでも、守り続ける彼の生活・・・

ただ、彼の完璧を壊すものが現れます。

【ネタバレ】最終回の結末:建太郎は外に出る

結論から書きます。最終回で、建太郎は部屋の外に出ます。

この結末は、正直なところ予想しやすいと思います。

引きこもる男の話なら、最後は外に出るだろうと。ただ、この作品が面白いのは「出た」ことではありません。「何が彼を外に出したのか」です。

建太郎は何があっても部屋を出なかった

建太郎の計画は固く、次の出来事があっても部屋を出ませんでした。

※筒井先生の漫画は、読みやすいので、出なかった理由もまとめてくれています。

  • 隣の部屋の騒音に悩まされても
  • 元同僚に襲撃されても
  • 緊急事態宣言が解除されても
  • 戦争が始まっても
  • 国に資産を奪われても

ふつうなら、どれか一つで計画が崩れそうなものです。

最初は、攻撃にも対処し、対応策も考えています。
ただ、後半になると、もう対応のやりようがありません。

それでも、彼はひきこもりを続けていました。

なぜ建太郎は外に出たのか|「北風と太陽」の物語

建太郎の計画は「自分を守るだけ」の計画だった

建太郎は、ブラックな職場での生活に嫌気がさしてニーティングを始めます。
残りの人生を部屋で過ごし、暇をつぶす。
誰かを攻撃するわけでも、何かを手に入れるわけでもありません。ただ自分を守るための、消極的な計画です。
どれくらい消極的かというと、もしもの時の最終手段として、首を吊るロープを緊急脱出セットに用意するほどです。

北風は何度も吹いた

元同僚の襲撃。戦争。国による強引な資産の没収。物語が進むほど、建太郎に吹く風は強くなっていきます。
それでも、彼の計画は変わりません。
童話の旅人は、北風に吹かれるほどコートを強く押さえました。建太郎も同じです。攻撃されるほど、部屋にこもる理由を固めていきます。

太陽は一匹の子犬

変化は、ハチという守るべき存在ができた時に起こります。

ハチも建太郎が、能動的に飼いたかったわけではありません。
彼がどうしようもなくなり、ロープに手をかけたとき、キューンという鳴き声を聞きます。
それはごみ袋からの鳴き声。
ごみ袋を回収すると、植木鉢に入れられた、死にそうな子犬がいました。

助けたい!その一心で、建太郎は行動をはじめます。
そう思った途端に、彼の生活が変わります。

ハチと名前をつけ、子犬を育てます。
牛乳を与え、目が見えない犬のために、薬をネットで買います。
建太郎がどんどん行動的になっていきます。

完璧な計画を崩したのは、彼の意思

どんな攻撃にも崩れなかった計画を変えたのは、ただの子犬でした。ここが、この作品の一番面白いところです。

激しい攻撃、理不尽なしうちにも変わることがなかったニーティング・ライフという計画。

これがハチで変わります。

ただ、ハチが何かをしたわけではありません。

太陽に照らされた旅人が自分でコートを脱いだように、建太郎は自分の意思で、計画を壊します。

下巻の紹介文には、人生を取り戻す物語だと書かれています。彼は、自ら立てた消極的に終わるはずの人生を、取り戻すのです。

ニーティングライフは打ち切り?最初から計画された結末

「ニーティングライフ 打ち切り」と検索する人がいるようですが、打ち切りではないと思います。

こんなにまとまっている作品が、途中で終わらされたとは思えません。

理由は3つあります。

1. 最初から「上巻」として発売されている

単行本は「1巻」ではなく「上巻」として出ています。上巻が出た時点で、全体の巻数が決まっていたと読めます。

2. 作者が、描きたいラストに向かって話を進めたと語っている

集英社オンラインのインタビューで、筒井先生は、最後の見開きを描きたくて、そこに向かってシナリオを進めたという趣旨の話をしています。
過去の作品でも、最後のページを決めてから描いたそうです。短い巻数で終わるのは、この作者の作風です。

3.「北風と太陽」の構造は、結末が先にないと組めない

北風を少しずつ強くしていき、最後に子犬を置く。この配置は、結末が決まっていないと作れません。
下巻の展開が急だという感想も見かけます。ただ、北風は強いほど寓話として効きます。国が動いても変わらなかった男が、子犬で変わる。その落差を作るための急展開だったと思います。

最初から、主人公が家を出るまでを計画して描かれた作品です。

ラストの仕掛け:これは小森建太郎が投稿した作品だった

※ここから先は、最終ページの仕掛けに触れます。

この物語は最後に、

以上が、小森建太郎によって投稿された作品ニーティングライフの全容である

で終わります。

この作品は、漫画の中で、繰り広げられた別の作品なのです。

公開した第三者は、こう書き添えています。

最初は、ノンフィクションルポのような体裁をとりながら進むが、途中から現実世界と異なる展開になり、あるいは最初からフィクションだったのか確認することはできない

上巻の最後、隣人の澄香と話すことで、建太郎は過去を思い出し、その過去を払拭するため、漫画を描き始めます。

上巻の最後の言葉は、これは僕が人生を取り戻すまでの物語だです。

よく考えると、下巻から、物語がフィクションのように変わっていきます。

小森建太郎は、自分が引きこもりから抜け出すまでを、伝えたかったんだと思います。

ただ、パンデミックはリアルですが、戦争、戒厳令、四足歩行のロボットがパトロールするなどは、ありえない世界です。

建太郎が、彼の虚構の世界の中で、感じた経験なのかもしれません。

ニーティング・ライフの表紙や巻末には、マインクラフトのような世界にいる建太郎の姿が登場します。

ネットゲームにはまる建太郎なので、彼がまだニーティング・ライフの途中にいて、部屋の中で夢を語っているだけだとしたら、怖くなります。

ただ、最後に1枚の写真があります。

ハチと並んで写っています。

まとめ:建太郎を救ったのは、ハチという太陽

彼の奇妙なニーティング・ライフを救ったのは、ハチという太陽です。

途中がどうであれ、彼は人生を取りもどすことが出来たのです。

本当のようなウソのような、それでいてバイオレンスやアクション、裏切り、絶望、希望。

いろんなことを上下巻という短い巻数で、一気に体験できる漫画でした。

ほかの完結漫画の感想は、こちらで紹介しています。