人類がいなくなった地球で、不老不死の姉弟が生きる漫画が、銀河の死なない子供たちへです。

作者は、「バーナード嬢曰く。」や「鬱ごはん」の施川ユウキ先生。
施川先生がはじめて挑んだ本格ストーリー漫画で、上下2巻で完結しています。

絵本のようなかわいいタッチの絵なのに、突きつけられるのは「死とは何か」という問い。
すぐに読み終わるのに、読んだあと、ずっと考えてしまう漫画です。

この記事では、前半でネタバレなしのあらすじと感想を、後半でネタバレありの結末の考察を書いています。
まだ読んでいない人は、ネタバレの手前まで読んでみてください。

銀河の死なない子供たちへの基本情報

漫画名銀河の死なない子供たちへ
作者施川ユウキ
出版社KADOKAWA(電撃コミックスNEXT)
連載ComicWalker・ニコニコ静画(2017年2月連載開始)
巻数全2巻(上下巻)完結
発売日上巻 2017/9/27、下巻 2018/8/27
価格各924円
アニメ化なし
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銀河の死なない子供たちへのあらすじ(ネタバレなし)

舞台は、人類がいなくなった遠い未来の地球。
そこで「ママ」と暮らしているのが、不老不死の姉弟、π(パイ)とマッキです。

永遠の命で、終わらない日々を過ごしていたふたり。
ある日、墜落した宇宙船の中で、人間の赤ちゃんを見つけます。

死なない者たちが、死ぬ者と出会うストーリー。

そこから、π(パイ)とマッキの考え方が変わります。

上下2巻ですが、お話は次の4つに分かれています。

  • 上 π(パイ)編
  • 上 ミラ編①
  • 下 ミラ編②
  • 下 マッキ編(描き下ろし50ページで収録)

銀河の死なない子供たちへの登場人物

π(パイ)

不老不死の姉弟の姉。
ラップを口ずさむのが大好きな、天真爛漫な女の子。

マッキ

不老不死の姉弟の弟。
いつも本を読んでいる、内向的な男の子です。

ママ

人類がいなくなった地球で、πとマッキと一緒に暮らしている存在。
あとで、人類からどう言われていたかが出てきます。

ミラ

墜落した宇宙船の中で、πとマッキが見つけた人間の赤ちゃん。
不死の姉弟に育てられ、ひとりだけ成長していきます。

銀河の死なない子供たちへの感想(ネタバレなし)

絵本のようなかわいいタッチの絵だけど、突きつけられるのは、死とは?という問いです。

上下2巻ですが、目次にすると、π(パイ)編、ミラ編①、ミラ編②、マッキ編の4つの話。
早く全部読めるけど、その後、いろいろ考えてしまうそんな漫画。

人間だれしも死ぬことは怖いけど、不死や永遠にも怖さがあります。

変な言い方かもしれませんが、この漫画を読むと、死への希望、不死と言う絶望というアンビバレントなことを考えてしまいます。

怖いですが、死ぬことも必要って思える漫画です。

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ここから先は、結末までのネタバレがあります。

あらすじを詳しく(ネタバレあり)

π編

π編は、人物紹介的な回。
といっても、登場人物は、4人しか出てこないけど・・・

とうに人類が滅亡した星が舞台。

序盤は、π、マッキ、ママの毎日。
ずっと死なないので、ただただ毎日を生きる。

πは、円周率をえんえんと刻み、朝だ夜だをなんども繰り返す、大波にのまれて、クジラに飲み込まれて、陸にたどり着いて・・・
そして、それをラップで歌う。

マッキは、漫画(火の鳥)や本をずっと読む。

ママは、暇すぎて、ずっと天井見てたら鍾乳石が首にぶっささって、天井までつながる。
死ぬほど痛いけど、痛いことは飽きないからとそのままでいる。

そんな感じ・・・

ある日、πは犬のモモちゃんを拾う。
ママの言いつけでペットは禁止だけど、マッキはたくさんのペットを飼い、亡くなると墓を建ててる。
それを見て、πも欲しくなる。
ただ、モモちゃんは寿命が来て、死ぬ。
πは悲しくなって、首を吊るが、当然、死なない。

「だからペット禁止なの」とママに言われる。

死んだらどこに行くのか・・・

マッキはずっと考えていた

その答えを探すために、ふたりで人間を探すことになる。

ただ、見つからない。
動物は見つかるけど、人間はいない・・・

そんな中、空がピカっと光り、宇宙船が落ちてくる。

中から女性が現れ、その女性は出産するが、すぐに息を引き取る。

彼女は最後に言う

「赤ちゃんをお願い
名前はミラ」

ミラ編①

πとマッキは、ミラ(女の子)を育てることにする。
マッキが選んだのは、遊園地の跡地。

ミラはすくすくと育つ。
遊園地のジェットコースターの上に登ったり、あと本を読んで、自分で勉強をする。
πやマッキより、背も大きくなる。

ミラは、遊園地の外に出る。
外の世界が見たくなって・・・

ただ、外は怖い世界。
ハイエナに囲まれ、襲われそうになったところをママが助けてくれる。
ただ、ママには助けたことを内緒にと言われる。

ただ、ママは最後に言う。

あの人間の子供
やっぱり殺してしまおうかしら

ミラ編②

ミラはどんどん成長して、初潮も来る。

母親になれるようになったミラは、マッキに、母親とはどんな存在かを聞く。

マッキは、そもそも僕たちは人ではないと言う。
そして、僕たちも母親がいると
やさしくて、物知りで、いつも見守ってくれて、
人がたくさんいた時代からずっと生きていると・・・

ただ、マッキは、ときどき人間を〇〇したのは、母さんなのかもとも言う

ミラはどんどん成長する。
そして、πやマッキを妹や弟を見るような目で見る。

大きくなったミラは、πらのママに会いに行く。
ミラをもてなしてくれるママ。

ただ、ミラは率直な疑問を投げかける
人間を〇〇したのはあなたなの?

その夜、ミラはママに狙われる。
その理由は、πやマッキが置いて行かれるから・・・
ただ、もう手遅れ

ミラは病気になる
マッキが薬を作ってくれるがそれは鎮痛剤で治すことはできない。

ミラが死を悟ったとき。
ママが現れて、π、マッキの秘密を教え、
ミラに選択をせまる。

マッキ編(ある決断)

ミラが亡くなり、πは気を落とし、死んだように眠っている。

ママから、マッキたちが人間であったことを改めて告げられ、
不死の呪いを解く方法を聞く。

マッキは、それを聞き、世界中を探し回る。
宇宙船を求めて・・・

ある日、マッキは、眠っているπを起こし、ママと一緒にご飯を食べる。
ママから、あらためて二人の過去の秘密が明かされる。
πもマッキも人間だった。

人間に戻りたいと言うπに、マッキは宇宙船を見つけたという。

二人で宇宙船の元に行き、πは未来へ向け旅立つ。

銀河の死なない子供たちへの結末を考察|それぞれが考える死

可愛らしい絵の漫画ですが、突きつけられるのは、「死」とはということです。

下巻は、4人の登場人物の死への選択が描かれます。

それぞれの死の考え方について考察します。

ミラが考える死

ミラは死を、当たり前のものと考えています。

ミラは人間です。

πやマッキより、背が高く、成長するにつれて、考え方もより早く成熟します。

初潮を迎え、自分が母になれるようになったと理解し、生を感じ、同時に死も感じます。

ママからもらった情報端末をのぞき、汚染された地球では人間が長く生きられないことを知り、より自分の死を感じて生きます。

ミラは、πやマッキよりも、考え方が大人です。

ふたりに育てられますが、いつしか、自分の妹や弟のように感じていたような気がします。

ミラだけが成長し、ミラだけが変わり、ミラだけがいずれこの世界から消え去ります。

ママに会ったとき、ママに殺意を向けられます。

3人で幸福な時間をつみあげているけれど、あなたは成長し、勝手に死んでいく。
πとマッキを永遠に置き去りにして、ありったけの幸福を持ち逃げする
これが正しい命のあり方だと見せつけるように

ミラの死期がせまります。

ふたりを残す悲しさを感じ、ミラは船を作り、出ていこうとします。

でも、体が痛くて、船を作ることもできません。

死にたくないと願いますが、こうも言います。

いつか死ぬってわかった時
私は人間になったんだ
そんな気がする

ミラは人間であることを自覚し、だから私は死ぬと決めます。

だから、ママに不死の命を与えられても、嫌だとそれを拒否します。

ミラは人間で、大人だからです。

ミラは、ふたりに感謝をして、星になって、ふたりを見守ることを決めました。

ミラの本当の名前は未来です。

未来は永遠ではなく、現世の先です。

ミラは、πやマッキに未来をたくしたんだと思います。

ミラの母親がそうしたように・・・

ミラは死こそ人間であることで、未来をほかのものに託すと考えていたんだと思います。

それが正しい命のあり方なんだと思います。

πが考える死

πは死をあまり分かっていないのかもしれません。

πは、たぶん、この漫画の主人公です。

一番、最初からラップを歌う少女として登場し、最後に星めぐりの歌を歌って終わります。

πは、無垢な存在です。

永遠の命をもらってからも、ただ、その世界を素直に楽しんで過ごします。

そこに、モモちゃんというペットが出来、死んで悲しみを知り、ミラと出会い、深い悲しみを知ります。

見た目はずっと少女ですが、悲しみを知り、少しずつ大人になっていきます。

ママに「人間に戻りたい?」と言われたとき、

πも行きたい
星の海の向こうへ・・・
だから人間になる

と言います。

最後、マッキから宇宙に行ったら死ぬかもしれないよと言われても、あまり良く分かっていません。

今、どんな気持ちと聞かれると、

すっごくドキドキする

と言います。

マッキが一緒にいかないと言っても、ただ、πは宇宙へ行く選択をします。

πは、死をまだよくわかっていない気がします。

この漫画は、πの成長を見る物語なのだと思います。

πに感情移入しやすいのは、読んでいる私たちも死をリアルに考えていなくて、この漫画を通じて、死というものに向き合うからだと思います。

私たちもπと同じように死を分かっていません。

この漫画の本当の終わりは、πが宇宙船で過ごした先にあると思います。

ただ、先には、πの死があります。

ちょっとさびしい気がしますが、マッキが残した手紙にある通り、その先には、未来(ミラ)があります。

マッキが考える死

マッキは、死を傍観者のように見つめている気がします。

マッキは、モモちゃんが死んで悲しんでいるπに、

まだ死んでない人間に会って
直接聞いてみたいんだよ
いずれ死ぬことについて
死なないことについて

と言います。

マッキは、πより先に、いろんなペットを飼って、死なせて、墓を建てて、悲しい経験をしました。

本が好きなのもありますが、πより精神的に大人です。

ミラが現れた時、πと一緒に、育てますが、少しひいた目でみているように思いました。

彼は、ミラが死ぬことを知っているからだと思います。

πのために、宇宙船を探して、動くようにします。

マッキは、他人のためにしか頑張れません。

たぶん多くの死を目にし、自分の感情がうごくのが怖いんだと思います。

マッキは、最終的に、ママと一緒にいることを選びます。

一緒に行く未来の方が、希望があるような気がしますが、彼にはそれができませんでした。

彼の愛読書は、手塚治虫の火の鳥 未来編です。

火の鳥 未来編は、死なない男を書いた話で、主人公のマサトは、火の鳥から永遠の生命を与えられます。

誰もいない寂しさを埋めるために、新たな命の創造を考え苦悩する。輪廻転生を書いた話です。

マッキは、この本を何度も読み、マサトに自分を重ね合わせ、マサトをママに重ね合わせたんだと思います。

マッキにとって死は、自分にあるものではなくて、ほかにあるもの。

ペットのたくさんの死を経験し、自分とは別のものになったんだと思います。

だから、死んでない人間に会って、聞いてみたかったんだと思います。

自分にないから・・・。

マッキは、ミラに死について、聞いたのかなと読み返したのですが、直接は聞いていません。

ただ、マッキは、ミラの死にずっと向き合います。

印象的なのは、

病気になり、急激に老いていくミラが、永遠に子供のままでいるのと、いなくなるのとどちらが不幸?と言ったとき、

誰も不幸じゃないよ
僕とπにはミラがいて
ミラには僕とπがいる

と言う言葉です。

火の鳥では、マサトは誰とも話せないことになげき苦しみ、命の創造を考えます。

マッキは、一緒にいるという関係の大事さが身に染みているんだと思います。

マッキが、ママとの関係を望んだのは、自分がもう死ぬ側ではなく、死を見る傍観者だと感じたからだと思います。

ある意味、ママと考え方が近いのかも・・・

マッキには、もう死がないのかもしれません。

ママが考える死

ママは死なない存在で、神とか魔女とか言われる不死の存在です。

ただ、ママは多分、いちばん死を恐れていると思います。

彼女は、火の鳥のマサトと同じ存在で、不死の存在。

人間がいた時代にも、ママは存在して、その時は、孤独ではなかったんだと思いますが、人間が争いをはじめ、地球を汚し、ほかの星へ飛んでいき、おなじ人間を見殺しにする。

そんな中、πとマッキを助けたんだと思います。

マッキと死の考え方は似ていますが、ママは、マッキ以上に、いろんな死を経験して、感情がなくなっています。

ママにとって、πとマッキは、孤独を忘れさせてくれる唯一の存在。

だからこそ、彼らを悲しませたくないし、死を見たくないんだと思います。

ミラを殺すようなことをしましたが、本心は、彼女にもいてほしかった。

これ以上、死を見て、πやマッキとともに、自分も悲しい気持ちになりたくなかったんだと思います。

ママにとって、死は大事な関係を閉ざすもの。

新しい人間が生まれないママのいる地球には、未来がないからです。

タイトル「銀河の死なない子供たちへ」は誰に向けた言葉なのか

4人の気持ちになって、死を考えると、「銀河の死なない子供たちへ」というタイトルは、死に向き合っていないわたしたちに向けている気がします。

死なないは、漫画の中では不死ですが、タイトルが意味するのは、死をちゃんと理解していないという意味。

子どものときは、自分が死ぬなんて思っていませんし、ある程度、大人になっても、良く理解できません。

でも、大病をする、身近な人の死に直面して、死を理解します。

死を理解した時点では、ただ悲しいだけで立ち直れません。

πと同じように、ずっと寝込んでしまう人もいます。

ただ、ちゃんと死を考えれば、そこに未来を託す相手がいれば、絶望はせずに、希望も見えます。

マッキが読んでいた火の鳥は、輪廻転生の物語です。

死が終わりでなく、生まれ変わり、次の世代に託されます。

読む人の死の理解度によって、π、ミラ、マッキのどこにより感情移入できるかが変わると思います。

ただ、この漫画の終わりには、未来が待っている。

死は怖いものですが、絶望だけでなく、次世代への希望も待っている。

家族や、それ以外の関わった人びとに託されるものもあると言うことを教えてくれている気がします。

まとめ

銀河の死なない子供たちへは、絵本のような感じで読みやすく、すぐに読めます。

けど、理解しようと思って読むと、何度も何度も読まないと理解が進みません。

理解しづらいのは、意識的に拒絶しがちな死がテーマで、わたしが死にまだ向き合えていない銀河の死なない子供たちだからだと思います。

けど、気づきだすと、最初のπが星をずっと見ていることや最初のラップ、歌う星めぐりの歌が最後につながっていることが分かります。

見た目以上に、とても深く、最後は希望に満ちた話。

死は絶望だけじゃない気がしました。

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